軸 無事是貴人
春にいたって花がおのずから開くように、なんのはからい心もなく自然にはたらきだす人
無作無心の境涯に体達した人物、これを貴人という。
一年の終わりです。今年も無事に終わり、また来年が来ることを信じています。人間は
常に信じていないと生けていけない動物であると思います。特になんの根拠もなく信じて
いるけど、もし足元の大地を信用できないのだとしたら?きっと揺らがないだろう、この
橋は落ちないだろう、あの人は生きているだろう・・。情報が氾濫して疑心暗鬼になり、
信じることも騙される勇気もない人が増えているのも確かだと思います。しかし信じること
のできる人は美しい。信じることができてはじめて、生きていくうえでも何か大事を成す
ことができるような気がします。生きるのに意味を見出さないと生きていかれない人間
だからこそ、まずは信じる力を持つこと。信じるにしてもある程度の知識は必要ですが、
騙されてもその後の処し方がその人の力。全力をかけて信じることが出来る人―それで
こそ頭脳をもって生まれてきた人の生きる道だと思います。
亭主が手桶で水を持ち出し、蹲の水を新しく入れ替えて、迎えつけをします。まず、亭主が手や口を清めて、客を迎えに行き、その後客が亭主に続きます。溜まっている水は腐りますから、新しい水を入れ替えるわけです。流れる水は腐らない。何事も循環が大事?山で遭難しても流水を飲むことにしましょう。
炭手前です。これからお湯を沸かすための炭を熾す手前です。火箸をとって香を入れて風炉中で焚くと、とてもいい香りがお茶室に流れます。香木は伽羅、白檀など。時の権力者が切り取ったといわれる東大寺正倉院所蔵の蘭奢侍は有名です。
お湯が沸いたので道具を清めて薄茶点前です。
袱紗という布でお茶の入った道具、茶器や茶杓を拭いて清めます。道具を清めることは他の匂いや異物を混入させないこと。家では包丁も切る素材ごとに洗ってください、匂い移ってます。
お茶碗をお湯で温めて茶巾でふいていきます。冬はこの温める作業がかなり重要、温かいものは温かく、冷たいものは冷たくして出す。温度と時間で味は変化していきます。器を温める、家でも試してください。
半東という人がお茶を運んでくれます。客は自分で取りに行かなくていいです。テーブルのあるお茶席では、前に出られないので必ずこの半東がつきます。皆着物でお手前するのは初めてでしたが、裾に引っかかったり袖を汚したりする粗相もありませんでした。
日が暮れるのが早くなりましたが、この時期は日が暮れてから灯心の灯りを楽しむそうです。ろうそくの炎に照らされたいつもの庭や茶室が、とっても神秘的で優雅な雰囲気で非常に心が落ち着きました。